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水車小屋攻撃 他7篇

キイチゴj
「水車小屋攻撃 他7篇」 (エミール・ゾラ 朝比奈弘治訳 岩波文庫)
(承前)
 ページを繰るのがもどかしいような本に、出合って嬉しいです。

 「ゾラの短篇の特徴を挙げるとすれば、まずその多様性だろうか。」と訳者解説にあります。

 確かに、静かに拳を上げる反戦小説とも言える「水車小屋攻撃」。戦争の愚かさと人の愛を対比することによって、それぞれの本質に迫る作品です。
 さらにもっと短い「小さな村」が語る、深すぎるもの。
 うーんとうなりながら、次々読んでいきます。
 次の話は何?と、ぞくぞくしながら。
 
 かと思えば、寝取られ男の話「シャブール氏の貝」は、その皮肉な世界を、にやにやしながら読み進み、また、「一夜の愛のために」という超ロマンチックなタイトルの話には、思わぬ展開。

 また、「ある農夫の死」は、人が死ぬことについて、拳を振り上げるでもなく、皮肉でもなく、ましてや激情に任せるでもなく、淡々と語る小品。

 そして、どの作品にも、美しい自然描写・風景描写があり、穏やかな空気を漂わせます。
 だからでしょう。片肘張って、背伸びしながら、読み進むことはありませんでした。

≪墓地はなんと穏やかに、太陽に照らされて眠っていることだろう!墓地を囲む生垣にはウグイスが巣をつくっている。あちこちにキイチゴが生い茂り、九月なると子どもたちがその実を食べにやってくる。まるで自然まかせにすべてが大きくなる、野原そのままの庭園のようだ。奥には巨大なスグリが群生し、その隅では一本のナシの木がナラのような巨木に成長している。中央にはボダイジュの涼しげな並木道がつくられていて、夏はその木陰に老人たちがパイプをふかしに来る。・・・・・・・(中略)・・・・・・・太陽に照らされた静かな死、穏やかな田園に守られた永遠の眠りだ。子どもたちが寄り集まってきた。・・・・・・(中略)・・・・それから彼らは家に帰る。家畜たちも野から戻ってくる。太陽が沈む。暑い夜のなか、村は眠りに入る。≫「ある農夫の死」(朝比奈弘治訳)

☆写真は、英国 テムズ河畔ブラックベリー

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