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みんなみすべくきたすべく

本のなかには、かならず人間がひとりはいる。

ティシャねこj
「逆さまゲーム」(タブッキ著 須賀敦子訳 白水社)

 タブッキの短編集です。この本には、ほとんど夢のことは出てきませんでした。
 「夢のなかの夢」も短編集でしたが、「夢のなかの夢」が「夢」をテーマに書き続けたものであるものの、この「逆さまゲーム」は、一遍目の話が「逆さまゲーム」というだけで、テーマが一つではありません。それに、質にもバラツキがあるような気がして、どれもが面白いとは思いませんでした。

 が、このタブッキの作風というのか、おおよそどれも、推理小説風に話が進展するものですから、ふーん、そういうこと?え?そうだったの?というのが多くの読後感です。よくわからんのもあったし・・・
 
 「チェシャ猫」という話の女性はアリスだし(しかも、話の中に「鏡の国のアリス」を読んだ人にだけわかるパロディもあります。)、「逆さまゲーム」のキーワードの一つはヴェラスケスの『侍女たち』だし、「空色の楽園」という話には、デュフィの作品論だけでなく『イケバナ』『モリバナ』『ウタマロ』と出てきて、『トリイキヨミネ』に至っては、ウタマロの亜流などと書かれていて、美術や、児童書が登場すると親近感がわくものの、「空色の楽園」の「おち」は、いまいちよくわかりませんでした。
 
 そして、「ドローレス・イバルーリは苦い涙を流して」という文に見つけたこの文を書き記しておきます。
≪・・・教養が大切だといって、本を、あの人は生涯に何冊いったい何冊読んだことでしょう。こころから愛していました。本のなかには、かならず人間がひとりはいる。だから本を焼くのは人間を焼き殺すのとおんなじだって。・・・・≫(続く)

*「不思議の国のアリス」「鏡の国のアリス」(ルイス・キャロル文 ジョン・テニエル絵 生野幸吉訳 福音館)

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