FC2ブログ
 

みんなみすべくきたすべく

おまえを画家にした

            果物籠j
(夢の続き)(承前)
 で、タブッキ「夢のなかの夢」(和田忠彦訳 岩波文庫)です。
≪…(前略)・・・そこのおまえ、言葉にはださずキリストの指が言った。おれかい?おどろいてミケランジェロ・メリージは訊き返した。おれはお召しを受けるような聖人なんかじゃないぜ。たかが一介の罪深い民のおれが選ばれるはずがない。だがキリストは聞く耳持たぬというように表情ひとつ変えはしなかった。そして差し伸べた手に疑う余地はなかった。ミケランジェロ・メリージはうなだれて、テーブルにおいた金貨を見つめた。おれは盗みもはたらいたし、とかれは言った。殺しもやった。この両手は血で汚れている。・・・・・(中略)・・・・・・・
キリストはかれのそばまで来ると、そっと腕にふれた。わたしはおまえを画家にした、とかれは告げた。だからおまえには絵を描いてほしい、これから先おまえは天命にしたがって歩むがよい。・・・・(後略)・・・≫
 
 この「おまえを画家にした」という言葉に、強く惹かれました。
 荒くれ者の無法者が描き続けた世界。
カラヴァッジョの作品の多くには、おぞましい世界が目をそらすことなく描かれ、あるいは、妖しげな世界が描かれています。当時の他の絵画と比べると、あるいは、この後に続く絵画を見ると、この画家の残したものの大きさは、計り知れません。それに、カラヴァッジョが残した唯一の静物画と言われる「果物籠」になぜ引きつけられるのか・・・
  タブッキが「夢のなかの夢」で書いたくらいのことがなかったら、カラヴァッジョは世に残らなかったのかもしれないと思ってしまうのです。(夢は続く)

☆写真は、左カラヴァッジョ「聖マタイの召命」(岩波美術館「バロックとロココ」)。
 右「果物籠」(イタリア・ルネサンスの巨匠29 バロックの誕生 ジョルジョ・ボンサンティ著 野村幸弘訳 東京書籍)

PageTop