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シェイクスピアの消息

あんはさうぇいj
(承前)
 「スケッチ・ブック」に入っている「文学の変転」という硬いタイトルのエッセイの中身は、永い眠りから覚めた本との対話という、お話の世界のようです。とはいえ、そんなファンタジーの世界のような形を取りながらも、書き綴っている内容は、柔でないところが、面白いところです。

 2世紀以上の眠りから覚めた本は、
自分が全世界の読者のために書かれた本で、寺院の本を蝕む虫のために書かれた本でないといい、図書館は後宮(ハーレム)ではなく、宗教的な建物に付属する高齢者介護施設のようなものだと示し、後世に残る作品のために腐心した数々の先人の末路を憂い、言語の変転を経て、時代の荒廃と流行の変化に翻弄されるだろうと示唆します。
 さらに、言語や消えて行った本や作品について、その眠りから覚めた本の嘆き節は延々と続きます。

≪・・・ところで、私がこの世を去る時分であったろうか、世間で騒がれていたひとりの文人がいたんだ。彼の辿った文人としての運命を伺いたいのだが、当時においては、この文人は一時的に脚光を浴びているに過ぎない人物と思われていたんだ。それもあって、評論家たちは彼をまったく相手にしなかった。その理由はこうである。彼は教養に乏しく貧しい憐れな生い立ちには同情するが、ラテン語は苦手だしギリシャ語はからきし駄目なんだ。何しろ,鹿泥棒をするために国中を駆けずり回らなければならなかったんだから。この文人の名前は確かシェイクスピアとかいったと思う。無論、彼の名はとっくの昔に忘却の彼方に葬られたことだろうな。≫
 
 この「スケッチ・ブック」が書かれたのが、1819~1820年。
 今、読んでいるのが2015年ですからこの眠りから覚めた本が在ったとしたら、およそ400年後ということになりますよね。が、シェイクスピアの書いたものは、まだ生きている。しかも、英国だけでなく、世界中に広がって・・・
 それが、なにゆえか、アーヴィングは続けます。(続く)

*「スケッチ・ブック上下」(アーヴィング 齋藤昇訳 岩波文庫 挿絵:F.O.C.Darley Smillie Huntington Bellows R.Coldecott)
☆写真は、英国 ストラト・フォード・アポン・エイボンにあるシェイクスピアの妻アン・ハサウェイ生家。(撮影:&Co.T1)

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