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みんなみすべくきたすべく

おもむろに口をきいた

        おーるどくりすますj
(承前)
 アーヴィングの「スケッチ・ブック」が、新訳も含め今まで複数の人に訳されてきたのは、この随筆集に読者を引きつける力があるからでしょう。

 今回の完訳版には、挿絵も入っていて、挿絵好きとしては大満足なのです。下巻のクリスマスエッセイ部分には、コルデコットの挿絵が「Old Christmas」からほんの一部ではありますが、使われています。ちなみに、アーヴィング「ブレイスブリッジ邸」(齋藤昇訳 岩波文庫)の挿絵は、全部コルデコットです。
  クリスマス関連の文のことは、春には書く気がしないので、いずれ、クリスマスシーズンに書くことにして、有名なリップ・ヴァン・ウィンクル(いわば、浦島太郎物語ですね)や、ジョニー・デップ主演の「スリーピー・ホローの伝説」も、またの機会にして、「文学の変転」といういかにも、難しそうなタイトルなのに、ちょっとおかしい話の紹介を。

 ≪英国のウエストミンスター寺院の奥、その図書館で、アーヴィングが思索したりしながら、四つ折り版の本をコツコツ叩きながら弄んでいたら、真鍮の留め金が緩み、その小さな本は深い眠りから覚めた人間のように生あくび。少ししゃがれたような咳払いを、響かせるとおもむろに口をきいたのである。≫

 おお、なんと自然に本がしゃべりだすことよ。映画や、アトラクション施設で、肖像画が喋ったり、壁から人が現れ出たり、ドアノッカーが口をきいたり・・・と一緒ですよ。言葉だけで楽しめるイリュージョン。

 この本は蜘蛛の巣に苦しめられ、寺院の寒さと湿気に長い間晒されていたので風邪をひいたらしいものの、最初はひどくしゃがれて途切れがちの声も響きが鮮明になってくると、その本が弁舌巧みな本であるということが判明。その言葉は古めかしく陳腐な感じもするし、アーヴィングの時代からすると発音も粗雑と思われるような抑揚。この本は自分の立場を悲嘆するととともに、文学上の不満についても愚痴をこぼし、この本が二世紀以上も開かれなかったことを嘆きます。・・・
 さて、どんな話をしたかというと・・・(続く)
*「スケッチ・ブック上下」(アーヴィング 齋藤昇訳 岩波文庫 挿絵:F.O.C.Darley Smillie Huntington Bellows R.Coldecott)

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