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みんなみすべくきたすべく

二冊の博物誌

くじゃくj
(承前)
 「博物誌」は、岩波文庫の辻 昶訳と、新潮文庫の岸田国士訳があります。
 各章、注釈が細かい辻 昶訳が面白く、フランス語の隠された意味だとか、洒落だとか皮肉だとかも、楽しめました。
 それから、二冊には二人の画家が挿絵を描いています。
 岩波文庫はロートレック(写真左)新潮文庫は、ボナール。(写真右)

 ロートレックがこんな絵を描くとは知りませんでしたから、新鮮でした。繊細なタッチが作品の品を高めているようで、訳とともに、この岩波文庫が好みの1冊となりました。(ただ、全部掲載されていないような・・・)
 
 一方、ボナールの挿絵は、大胆で、ときとして、本題のユーモアを成り替わり表現しているかのようなタッチです。そういえば、岩波文庫の「ダフニスとクロエー」も、ボナールの絵でした。

 今回、ヴァロットン展を見に行った発端は、パリ オルセー美術館で見た絵「ボール」だったことは書きましたが、オルセーでヴァロットンの隣に展示してあった、やはり、日本の空気むんむんの作品が、ボナールの「砂で遊ぶ子ども」でした。描かれている子どもは、日本の小さなおかっぱの女の子のようで、しかも、絵自体が掛け軸のように長い絵。先のヴァロットンとともに、とても印象深かった絵でした。
 
ヴァロットン」から「にんじん」に行き「博物誌」に行き、「ボナール」に来て、小さく一回りした気分です。

≪「くじゃく」
きょうこそきっと、結婚式をあげるだろう。  式はきのうあげられるはずだった。礼服を着こんで、待ちうけていた。花嫁が来さえすればよかったのだ。ところが、花嫁は来なかった。だがきょうは、もうそろそろ来るだろう。  誇らしげに、彼はインドの王子みたいな足どりで散歩している。・・・・・・・花嫁はやってこない。・・・・・・きょうの残りの時間をどうやって過ごしていいのかわからないので、玄関の前の階段のほうへ歩いていく。神殿の階段でものぼるみたいに、しゃっちょこばった足どりで、一段一段、しずしずとのぼっていく。・・・・・・もう一度、結婚式の下げいこをしているのだ。≫(辻 昶訳)
(続く)

*「にんじん」(ルナアル作 岸田国士訳 ヴァロトン挿絵 岩波文庫)
*「博物誌」(ルナール文 ロートレック絵 辻 昶訳 岩波文庫)
*「博物誌」(ルナール文 ボナール絵 岸田国士訳 新潮文庫)
*「ダフニスとクロエー」(ロンゴス文 ボナール絵 松平千秋訳 岩波文庫)

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