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みんなみすべくきたすべく

長編部門

モンマルトルj
(承前)
 どのくらいの長さが中編で、どれくらいあれば長編か、よくわかりませんが、ともかくオーウェルの「動物農場」より長い。
 「動物農場」は、春先早々と今年一番面白かった本としていました。今日の「ジェルミニィ・ラセルトゥウ」は、全然、方向違いの江戸からアプローチしていった途上で出会った1冊でした。永井荷風「江戸芸術論」(岩波文庫)を読んだ流れで、ゴンクウルにたどり着きました。

 それで「ジェルミニィ・ラセルトゥウ」 (ゴンクウル兄弟作 大西克和訳 岩波文庫)
 訳が少々古いので、情けないことに漢字が読めないのもあるし、少々しんどいなと思いながら読み進んでいきました。主人公が転落していく転落していく・・・と思う間もなく、また、泥沼に転落していき、暗い暗い深淵に。そして、破滅。ああ、悲惨。決して読後感のいい本ではありません。

 主人公の行状や、ちょっとした心の動きを書いただけなら、他に作品もありましょう。モデルになった女性が居たとはいえ、19世紀半ば、まだ心理学や精神分析等やなんやかんやが確立されてない様な頃、よくもまあ、この女性の落ちて行く心が書けたなと。階層の違う、ましてや、男性作家たちが。

 圧巻は、最後の最後、ジェルミニィの死後、彼女の行状を知ったマドマゼルの心理描写だと思います。ここを読むために、長々と、ジェルミニィを奈落の底に落としていったとはいえ、人が人を「赦す」という葛藤を、描ききっていると思います。とはいえ、悲惨さには変わりないので、暗いのを読みたくない人にはお薦めできません。

 この作品が、エミール・ゾラに影響を与え、この作家が、フランス写実主義を代表する三大作家であること。これまた、私が、今までよく知らなかっただけであって、極東の21世紀に生きる読者が、あっけなくノックダウンする作家であるのは、当然のことのような。(続く)

☆写真は、パリ オルセー美術館から、モンマルトルの丘を撮りました。
 ジェルミニィ・ラセルトゥウの十字架のない墓は、モンマルトルの丘にありました。

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