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みんなみすべくきたすべく

短編部門 続き

のれんj
(承前)
 「この人の訳は、上手い」などと偉そうに、カ・リ・リ・ロがいうまでもなく、三島由紀夫が、生田耕作の訳をすでに絶賛しているらしい。
 
 短篇集「愛書狂」を読み進んだものの、訳者が書いた作者紹介のところで、「ん?もしかして、この訳者の生田耕作って人も、古書蒐集してる?」と思わせる匂いがぷんぷん。そしたら、文庫版の後書きを書いた恩地源三郎(書画肆主人・翻訳家)が、訳者生田耕作も、愛書狂だったことを書いていました。しかも小さな出版社まで立ち上げていたらしい・・・「解説――『愛書狂』生田耕作」

  やっぱりね、と納得しながら、さらに調べたら、この生田耕作自体にも深みにはまりそうな魅力が見えてきて・・・・かくして、本の連鎖がさらなる連鎖を呼び、読み続けることになるかも?ただ、電車で読みにくい文庫の一種、フランスデカダンスやシュルレアリスム系の翻訳が多いような。フーム。

 以下は、第4話『愛書狂地獄』(Ch.アスリノー)の書きだしです。
≪左様…地獄だ。世の良識人たちの与り知らぬ歓楽(よろこび)に心奪われたる爾(なんじ)等、現世来世を問わず爾等すべての早晩行き着くべき先には、常に彼の地ではあるまいか。    恋する男には失恋という地獄がある。賭博師には、素寒貧。野心家には、挫折。芸術家には、無名と羨望。怠け者には、飢え。守銭奴には、破産。そして、大食漢には、胃弱という地獄が。    しかし、身銭を切ってその道一筋に専念する、しかも四つ五つの産業を支えることによって、ひいては文学や祖国の名声に貢献することにもつながる、なんの罪科(つみとが)もない趣味(マニア)の前に「地獄」が待ち受けていようなどとは。私にはとうてい信じられないことであった。     けれども、それが存在するのである。今の私は知っている、なぜならこの私自身がそこから引き返してきたばかりだからだ。・・・≫(生田耕作訳)

*「愛書狂」(G.フローベールほか 生田耕作訳 平凡社ライブラリー 挿絵は、O.ユザンヌ『巴里の猟書家』から)

☆写真は、京都祇園一力屋の暖簾。
 生田耕作は祇園出身だと、紹介されることが多いようです。多くの作家紹介では、~県出身とか~市出身と書くところを、わざわざ「祇園」とするところに、何か意図するものを感じます。

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