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みんなみすべくきたすべく

アラン島

あさひj
≪彼は私に歌が好きかと聞いて、その手並みを示すべく歌ひ初めた。節は、前に此の邊の島島で聞いたものとよく似てゐた―音律をつけるために高い音と低い音の後に休止を置く、抑揚のない歌であった。併し鼻にかかった耳障りな聲で歌ふのは殆どやりきれなかった。歌い振りは、その全軆として私がかつてパリ―からディエプまで旅行したとき,三等車の中で東洋人の一行から聞いた歌を憶ひ出させた。併し此の島の人は聲をもつと廣い範疇に繰った。≫

えぇー耳障りな歌い振りの東洋人ってか? ふん!

 と、書いたまま2年くらい放置していた「アラン島」(岩波文庫)の一行感想文ですが、「シャムロック・ティー」「琥珀捕り」の訳者で、「アイルランドモノ語り」の著者の栩木伸明氏の訳による「アラン島」も読んでみました。

 上記と同じ箇所です。
≪・・・この男は僕に、歌は好きかね、と尋ねて、ひとふし披露してくれた。   単調な歌のリズムをはっきりさせるために高い音と低い音の間に休止をはさむ歌い回しは、これまでに他の二島で聞いたのと似たようなものだったが、この男の鼻にかかった不快な声の調子はほとんど聞くに堪えなかった。彼の歌の全体的な印象が僕に連想させたのは、かつてパリからディエップ行きの三等列車で乗り合わせた東洋人のグループが歌っていた歌である。しかし、この島の男のほうが声の音域ははるかに広かった。≫

 「耳障りな聲」が「不快な声」に、「やりきれない」が「聞くに堪えない」と日本語がちょっと変わるだけで、ずいぶん印象が違います。(続く)

*「アラン島」(シング 姉崎正見訳 岩波文庫)
*「アラン島」(J.M.シング 栩木伸明訳 みすず書房)
*「アイルランドモノ語り」(栩木伸明著 みすず書房)
*「琥珀捕り」(キアラン・カーソン 栩木伸明訳 東京創元社)
*「シャムロック・ティー」 (キアラン・カーソン 栩木伸明訳 東京創元社)

☆写真は、スイス レマン湖朝

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