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ラズモア

ジギタリスj
「妖精にさらわれた男の子―アイルランドの昔話」 
 (W.B.イェイツ 作 N.フィリップ編 山内玲子訳 P.J.リンチ挿絵 岩波)
(「湖の水ひたひた岸打つ低き音」から続き)
(承前)
 「イニスフリーの湖島」の詩人イェイツは、アイルランドの昔話を集めた人でもありました。その選集から、またイェイツ自身の詩と19のお話を選んだのが、この本です。
 その中に、「ノックグラフトンのこぶとり妖精の伝説」というのがあります。
ほら、日本にもそっくりの昔話がありますね。そう、「こぶとり爺さん」。
 結末は、欲張ったら、あかんのがよくわかるお話です。
 
昔、背中にこぶのある、手先が器用な男が居て、わらやイグサを編んで帽子やかごを作って生計を立てていました。この男はラズモアとあだ名されていました。それは、いつも麦わら帽子に『妖精の帽子(フェアリー・キャップ)』ともいわれるラズモア(キツネノテブクロ、ジギタリスのこと)を挿していたからです。
ある日、ラズモアは、妖精たちが塚の中で歌う「月曜日、火曜日、月曜日、火曜日・・・」と繰り返すメロディに、割りこんで「それから、水曜日」と入れると、妖精たちは喜び、塚の中に、ラズモアを引き入れ、もてなし、おまけに、こぶまで取って、新しい服をくれます。その噂は広がり、人のいいラズモアは、別のこぶのある男にも、塚の場所や歌を教えるものの、早くこぶを取ってほしい欲張りは、リズムや調子も考えずに、「それから木曜日、それから金曜日」と、新しい服二着分、わめいてしまったので、妖精たちは怒り狂い、二倍のこぶをつけたというお話。

 ラズモアのことをアイルランドでは、『妖精の帽子』といい、英国ではフォックスグローブといいます(キツネノテブクロ:「あひるのジマイマのおはなし」に出てきます)。また、「ノックグラフトンのこぶとり妖精の伝説」の他にも「司祭さまの食事」という話には、妖精たちの隠れ場所としてラズモアが出てきます。
 
 キツネノテブクロ別名ジギタリスは、毒性があるので、不吉な植物のイメージがある植物とされているようですが、アイルランドの妖精のShefroシーフラ(群れをなす妖精たち)の絵では、必ずこの花を頭に載せているので(「英米文学植物民俗誌」)、こぶのあったラズモアの装いは初めから、妖精に親しまれる装いだったということですね。(続く)

*「英米文学植物民俗誌」(加藤憲市著 冨山房)
*「あひるのジマイマのおはなし」(ビアトリクス・ポター作 石井桃子訳 福音館)
☆写真は、英国 ヘミングフォードグレイ村 グリーンノウシリーズの舞台となったオールドマナーの庭に咲くキツネノテブクロ(ジギタリス・ラズモア)

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