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原作「あなたを抱きしめる日まで」

4人のがうんj

 (承前)
 映画「あなたを抱きしめる日まで」の原作の原題は、"Lost Child Of Philomena Lee"といい「フィロミーナ・リーの失われた子ども」です。

 映画では、母親の苦しみと、1950/60年代のアイルランドの修道院がどんなことを行ってきたのか、の告発の意味合いを持つものでしたが、原作は、その子どもだったアンソニーの苦しみの過程を中心に描かれています。

 失ったものの大きさが、この本を読むとわかります。映画よりも、明確にわかります。
 心に飢えた部分を抱えたまま大きくなった人の成長の歴史とも言える本です。そして、アメリカの現代に至る同性愛者たちの苦しみの歴史とも重なって、結果、かの修道院がしてきたことの深さを知ることになるのです。告発という一言で済まされない重さです。

 フィロミーナ・リーもアンソニー・リーも実在の人で、フィロミーナは、ご健在です。
 アンソニー・リーは、アイルランドから養子となってアメリカに渡ります。そして、その名がマイケル・ヘスとなり、地元の大学を出た後、養父母の元を去り、ワシントンDCのロースクールを終え、ハリウッドスターのようにハンサムな男性となったマイケル・ヘスは、若くして、大統領の側近となるのです。
 そんな当時の写真やビデオを見て、映画の中の母親は「私だったら、こんなことしてやれなかった」とつぶやくところあります。ビデオや写真に写る幸せそうな息子のアメリカでの人生を知って、自分を納得させるシーンでした。
 けれども、幸せそうに見えた息子が、実際のところは、もがき苦しんでいたという事実が、この原作には書かれています。
 
 本の中で、カウンセラーのドクターが、こんなことを言っています。
≪「すべてはごく幼い頃の経験にさかのぼり、その経験が残りの人生を形作る。赤ん坊が生まれてわずか数分後には母親の顔を見分けられるのを知っているか?子宮で四十週間過ごすうちにすでに強い絆が生まれているから、捨てられるのは大変な経験なんだ。生まれてすぐに手放されても、なんらかのレベルでその記憶があり、破滅的な結果がもたらされてしまう。」≫(続く)

*「あなたを抱きしめる日まで」(マーティン・シックススミス 宇丹貴代美訳 集英社文庫)

☆写真は、マイケル・ヘスの出身校ジョージ・ワシントン大学ロースクールの卒業ガウンではありません。同じワシントンDCにあるジョージ・タウン大学ロースクールのもの。(撮影:&Co.T2)

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