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みんなみすべくきたすべく

画家の随筆集

                    コサギjj

 ここのところ、東京や江戸に興味がわいているのと、薄い本なので電車のお供にと、読んだのが、随筆集「明治の東京」 (鏑木清方著 山田肇編 岩波文庫)です。著者 鏑木清方が、日本画家であるのは知っていましたが、この人の流麗な文章は、この随筆集で初めて知りました。

 「伝統」という文の中に、こんなことが書いてありました。
≪ 楮(こうぞ)や三椏(みつまた)、雁皮(がんぴ)などで手漉(てすき)にした日本の紙、私は自分が仕事で使うものでも、住居、または手廻りの日常に用いるものでも、その手ざわりや匂いを愛でて時の移るのを忘れることがこのごろ度重なる。
和本のこばを揃えて綺麗に裁ったのや、洋本でもいい紙のいい製本になったもののページをぱらぱらとめくってゆくと、弾力のある紙の指に快いひびきを伝えるのも楽しい。
そうして思うことは、口腹(こうふく)の飢は食に依って充たされる、心の飢を充たすには、どうしたってこれをわが国の正しい伝統の上にうちたてられた文化にもとめるより他はない。≫

 名物や甘いものを、ただ並べただけの文も、リズムがあって楽しく、また、「芝居昔ばなし」でも、こんな調子です。
≪新富座は何度も手入れはしたけれど、震災前までとにかく大体の輪郭を保っていた。鼠木戸、海鼠壁(なまこかべ)、絵看板、庵看板(いおりかんばん)そういったものに昔の俤(おもかげ)を長くとどめていたのもこの芝居だった。小雨降る日、雪の降る夕、木挽町一丁目の方から、塗家(ぬりや)の小屋の白壁に黒々と丸にかたばみの守田の定紋(じょうもん)のついた、その下に何枚かの鳥居風の絵看板、古風な鼠木戸の外がかりを、画工(えかき)になっていくたびか画にしたいと思ったこともあった。≫

・・・と、画家という人間の目の動きが、よくわかり、読むだけで、その画を見ているような気になります。(続く)

☆写真は、近所の河口のコサギ

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