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魔法の樽

       レマンのあさj
 「魔法の樽 他12篇」 (マラマッド作 阿部公彦訳 岩波文庫)
 おお、またNYのユダヤ系作家。すでに他社から何冊か翻訳されているらしいのですが、浅学な私自身は、初見の作家でした。
 この作家も、お話運びがうまく、短篇集ということもあって、あっというまに読み終えてしまいました。多くが、すとんと終わり、え? ん?という感じなのですが、それまでの積み上げが丁寧なので、納得がいきます。
 そして、ユダヤ系の作家の文学には、民族の背負ったものを表現しようとする使命感を感じます。いつも、どの話もと言うことではありませんが、やっぱり、底に流れるものは奥深いもの。

 短篇集「魔法の樽」の中の一つ、「湖の令嬢」は、一目ぼれした女性についた嘘、自分はユダヤ人でない。そこが物語の骨になり、そして、最後は重く重い事実と対峙する話です。
≪・・・彼女をイタリアから連れ出すためには先に結婚していないといけないので、式もキリスト教会ですることになるだろう。ことを早く進めたいから、それも仕方ないと彼は思った。毎日誰かがやっていることだ。彼はこんな風に決断したが、まだ何か引っかかるものがあった。ユダヤ人であることを否定するよりも------だいたいユダヤ人であることでどんな得をしたというのだ?悩みが増え、蔑まれ、忌まわしい記憶ができただけだ――――それよりも愛する者に対する嘘が問題なのだ。一目惚れに嘘。これが心の傷となって彼を苦しめた。しかし、そうするしかないのだから、あきらめよう。・・・≫

☆写真は、スイス レマン湖早朝。

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