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林太郎とエリーゼの恋

イニシャルj
(承前) 
 「鷗外の恋 舞姫エリスの真実」
(六草いちか 講談社)で、女性の視点を感じるのは、エリスの名誉を守ろうとしているだけでなく、「恋」というデータや文献で計り知れないものに迫っていく点でした。

 鷗外は、別の名前をつけようとした妻の反対を押し切って、二女の名前「杏奴」を勝手に役所に届け出ます。それは、鷗外の恋心の延長だと著者はみなします。長女は作家の森茉莉(まり)二女は小堀杏奴(あんぬ)です。そして、著者が苦労の末、特定したエリーゼは、エリーゼ・マリー・カロリーネ・ヴィートゲルトといい、母親も、マリー。妹は、アンナ、祖母は、アンネなのです。(ただし、後著「それからのエリス」では、少し違う見解も披露しています。)
 そして、鷗外は本名森林太郎といいますが、鷗外の「鷗」は、空を飛び交う「かもめ」です。ドイツでも日本でも見かける「かもめ」です。カモメに託す鷗外の深い部分。
  
 また、鷗外の遺品にモノグラム(イニシャル二文字を絡めたデザイン)型金(RとM 鷗外の本名:森林太郎)があって、これはかつてのドイツの婚礼の際、花嫁が新郎の身の回りや家庭の布製品にイニシャルを施すときに使う伝統があったと言い、後著でも、さらに論証を続けています。

 そして、著者は、鷗外の妹 喜美子の回想にこんな記述を見つけます。
≪(エリスは、)大変手芸が上手で、洋行帰りの手荷物の中に空色の繻子とリボンを巧みにつかって、金糸でエムとアアルのモノグラムを刺繍した半ケチ入れがありました。≫(1936年『文学』)

 鷗外の想いと、エリスの想い。
「恋」という形にならない心を名前や刺繍に見出す視点。(続く)

☆写真は、北欧のイニシャル刺繍の入ったリネンシーツ中古品。北欧の嫁入り道具のひとつかもしれない。左のスタンプは、ロンドン アンティークフェアーで購入。右の封蠟スタンプは、イタリア土産。

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