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みんなみすべくきたすべく

いまどきのキラキラネームどころじゃない

        レマンのユリカモメj
(承前)
 森鷗外の子どもたちの名前の付け方はなかなか独創的です。というか、ドイツ風。いまどきの「きらきらネーム」どころではありません。筋金入りです。
 「晩年の父」の作者の杏奴(あんぬ)、お姉さんの作家の茉莉(まり)、弟は類(るい)、兄は於菟(おと)夭折の弟は不律(ふりつ)。また森鷗外の孫には、真章(まくす)富(とむ)礼於(れお)樊須(はんす)常治(じょうじ)𣝣(じゃく)と続きます。

 小堀杏奴は言います。≪こんな妙な名前をつけられて実に長い間困ったが、この頃になって父がそれほどまでに熱心につけたがっていた名前であるし、字としても好い字だなと思って今では大好きになっている。≫

 また、ここでいう、「それほどまでに熱心に」というのが、後に母親から聞いた話として書かれています。
≪私を生む時母は夜明けからずっと苦しんでいて、いよいよ生み落としてほっとした時は夜もすっかりあけはなれ、雨戸を開けさせて庭を眺めていると恰度百合の花が一つ開いた。それで、母は百合という名前を私につけさせたかったのだが、父が長い間杏奴(あんぬ)という名前にするつもりで楽しみにしていて、私が生まれると母の反対を恐れ、一人でこっそり区役所へ行って届出をしてしまったというから、よほど好きな名前であったに違いない。≫

 さて、なにゆえ、鷗外は「それほどまでに熱心に」二女に杏奴(あんぬ)と名付け、初めての女の子に茉莉(まり)とつけたのか・・・
 「鷗外の恋―舞姫エリスの真実」 (六草いちか 講談社)に、その疑問への、身内の発想ではないアプローチがありました。この著者は、最近、実在していたエリスの写真を見つけ出し、発表なさった方です。(続く)

*「晩年の父」(小堀杏奴 岩波文庫)
☆写真は、スイス レマン湖のユリカモメ。鷗外の「鷗」はカモメ。

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