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みんなみすべくきたすべく

本の匂い

 ウェストミンスターj
(承前)
 シュタイデル社のゲルハルトは、本の匂いにまでこだわっています。
今や技術の進歩で、新刊の匂いが消されているとゲルハルトはいい、どの本がいい匂いか、などをレクチャーします。ただ、その匂いの出し方は企業秘密だと微笑むのです。
確かに、ずいぶん昔、私が子どもの頃は、新しい本を手にすると「さらの本の匂い」がして、嬉しかったのを覚えています。

 センダックはヴァージニア・ハヴィランドとの対話の中で、初めて本物の本(お姉さんが買ってくれた『王子と乞食』)を手にしたときのことを、こう言います。
≪まず最初にやったのは、それをテーブルの上に立てて、まじまじと見つめることでした。マーク・トウェインに感銘を受けたからではありません。ただただ、ものとしてとても美しかったからです。それから匂いを嗅ぎました。・・・いい匂いがしたというだけでなく表紙もつやつやしていました。ラミネート加工をしてあったのです。私はそれをはじいてみました。すると、とてもがっちりとしているのがわかりました。私はそれを噛んでみたことを覚えています。・・・・本はただ読むという以外にも、たくさんの意味があるのです。私は子どもたちが本で遊び、本を抱き締め、本の匂いを嗅いでいるのを見てきましたが、それを見れば本作りに心をこめなくてはならないのは明らかです。≫『センダックの絵本論』(脇明子・島多代訳 岩波)

 センダックとシュタイデル社が組んだら最強?の本ができたでしょう。見ているだけでため息が出そうな本。いえいえ、触ったらぞくぞくする本。見果てぬ夢ながら、想像するとわくわく。

「王子と乞食」 (マーク・トウェーン 村岡花子訳 ロバート・ローソン絵 岩波文庫)(マーク・トウェイン作 大久保博訳 F.T.メリル J.J.ハーリ L.S.イプスン絵 角川書店)

☆写真は、「王子と乞食」の最後の舞台となったウェストミンスター寺院をはじめ、国家議事堂など、テムズの近くの建物が写るロンドン。(撮影*&Co.T)

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