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みんなみすべくきたすべく

みがけば光る(その1)

地下鉄j
 この前は石井桃子エッセイ集 「家と庭と犬とねこ」が出ましたが、続いて出たのが、この「みがけば光る」です。(二冊とも河出書房新社)
 ここにも、前著と同じく丁寧に生きられた石井桃子さんの視点を読み取ることができます。個人的には、有名な「太宰さん」という文章より、「ヘレン」という文の中のヘレンさん、あるいは、「友だち」と題された文のMさんと言う市井の人の言葉や生き方に惹かれます。石井桃子さんが、励まされたように、読み手も励まされるのです。

 アメリカに滞在する石井桃子さんは、ごく一般的なアメリカの感謝祭の夕餉にMさんに招待されます。帰りのバス停で、老人のMさんと石井さんは、二人になります。
≪・・・日本をたつ時の、不安な気もちは、ひとっかけも、私の心のなかにないのです。私は、地球上で日本とは背なかあわせの大陸の、人かげもない林の中の道に立っていながら、さびしくもなんともないのです。私は、その時、ごく自然な気もちで、自分の感じをMさんに話しました。
 「石井さん、だれでも、いま、その人の立っているところが、世界の中心なんですよ」とMさんはいいました。
 私は、小さい時、おとなのなかにあると思った、重石が、このことばのなかにあるように思いました。「きょうは、ほんとにありがとうございました」と、心からいって、私はバスにのりました。人間は、ひとりひとりが、世界の中心なんだ。そして、そこにしっかり立って、まわりの人と手をくめばいいんだ、もたれかかってはいけない、あまえれば、くるしくなる・・・こんなことを考えながら、私は雑踏のニューヨークにもどっていきました。≫

 スカイプで、英国に居る娘にこの箇所を読みました。彼女はじっと聞いておりました。いまだに、読んでもらうのが好きな彼女です。

☆写真は、ロンドンの地下鉄のエスカレーター。

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