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アイザック・バシェヴィス・シンガー傑作選

                    地獄の門j
 シンガー(1904~1991)は、「よろこびの日―ワルシャワの少年時代」(工藤幸雄訳 岩波少年文庫)「やぎと少年」(センダック絵 工藤幸雄訳 岩波)「お話を運んだ馬」「まぬけなワルシャワ旅行」(M.ツェマック絵 岩波少年文庫)や、絵本の「メイゼルとシュリメイゼル」(M.ツェマック絵 木庭茂夫訳 冨山房)などを子ども向きに書いています。と、ともに、イディッシュ語で書いた小説で、ノーベル文学賞を受賞したユダヤ人の作家という方が、なじみのある人もいるでしょう。子ども向きに書かれた話も、大人を対象にして書かれた話も、どれもお話の運び方が上手く、ぐいぐいと引き込まれて行きます。シンガーは、「お話を運んだ馬」のお話の名手ナフタリそのものだと思います。

「不浄の血」
(アイザック・バシェヴィス・シンガー傑作選  西成彦訳 河出書房新社) 
 シンガー傑作選という大人向きの短篇集が河出書房新社から出ました。
 シンガーの大人向きの小説は、これまでも何冊か邦訳されています。そこには、人間の闇の部分、おどろおどろしい欲望を描いたものも多く、信仰という一本の柱、もちろんそれはユダヤのアイデンティティでもありますが、そこから広がる人間模様を書いた作品が主です。重いテーマの話にも、ちょっとした笑いが隠され、沈み込む内容を、時として救い出してくれます。ともかく、お話の運び方が上手い。また、口語性が強いとされるイディッシュ語が、より、お話に引き込む力を持つのだろうと考えます。

 この短篇集のタイトルにもなっている「不浄の血」等は、題名通りの、言わば、「えぐい」とも言える話で、暗い欲望の世界です。反対に最後に掲載されている「老いらくの恋」という話は、どろどろしたものがないスマートな展開で、ちょっとハリウッド映画の一シーンを見る様な明るい光を一瞬感じ、他とはちがった表現でユダヤの重さを表現しています。
(「ちびの靴屋」に続く)

☆写真は、東京 上野 国立西洋美術館 ロダン 地獄の門。

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