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みんなみすべくきたすべく

ウィトゲンシュタイン

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≪「ドラゴン」から続き≫
「ウィトゲンシュタイン家の人びとー闘う家族」
(アレクザンダー・ウォー 塩原通緒訳 中央公論新社)

(承前)
 さてさて、「シャムロック・ティー」の巻頭≪“世界は成立している事柄の総体である。”『論理哲学論考』ルートヴィッヒ・ウィトゲンシュタイン1922年≫に戻ってきました。
 哲学者ルートウィッヒ・ウィトゲンシュタインは、生涯、この『論理哲学論考』一冊を残しただけなのに、その影響を受けた研究者は、後を絶たず・・・らしい。世間で難解と言われて有名なものを、読めるはずもなく・・・とはいうものの、ウィトゲンシュタインWHO?というクエスチョンは消えず・・・
 
 それで、手にしたのが「ウィトゲンシュタイン家の人びと―闘う家族」でした。世紀末ウィーンの大富豪に生まれた夭折の子どもたちや天才たちの記録です。哲学者ルートウィッヒ・ウィトゲンシュタインとともに、その兄で、片腕のピアニスト、パウル・ウィトゲンシュタインのことにも紙面は割かれ、この本の中核となっています。また、後半は、ヒトラーの時代に生きたウィトゲンシュタイン家の人びとの闘う日々のことが書かれ、栄華を極めた家族の寂しい最後が書かれています。

 人は誰しも大なり小なりいろんなことがあるものの、富豪だったことと、彼らの生きた時代にユダヤの血も流れていたこと、天才が故の苦しみ等など、ほぉ・・・はぁ・・・の繰り返しです。

 ウィトゲンシュタイン家の音楽の夕べには、ブラームスが自作の「クラリネット五重奏曲」を聴きにきたし、リヒャルト・シュトラウスやグスタフ・マーラーも出席。後に片腕になったパウルのために「左手のための協奏曲」を作る依頼を受けたのが、ラヴェルであり、プロコフィエフだったとか・・・。パウルは、のちにベンジャミン・ブリテンのパトロンであった時があるとか・・・。クリムトに肖像画を描かせたパウル達の姉は、口の描き方が「不正確」だと非難し、無名の画家に訂正させるも気にいらず、その肖像画は屋根裏にほおりこまれたとか・・・(現在は、ミュンヘンの「新絵画館」に展示)哲学者のルートウィッヒは、留学先のケンブリッジで頼ったのがバートランド・ラッセルで、その師の心も奪うくらいの才能を見せるとか・・・戦時下、密かにアメリカに持ち出したのが、マチスやロートレック、ピカソやゴーギャン等など。国に売却したのが、ベートーヴェンの自筆手紙やブルックナーやワーグナーの自筆譜などなど・・・

 と、読んでいるうちに、あれ?これどこかで読んだような気がすると思いだしたのが、
何あろう。「シャムロック・ティー」なのです。「シャムロック・ティー」はフィクションなので、時代が入り乱れていますが、ウィトゲンシュタイン出てくる、コナン・ドイル出てくる、チェスタトン出てくる、オスカー・ワイルド出てくる・・・と、なんだか、煙にまくような登場人物の出場の仕方が、ウィトゲンシュタイン家に現れた実在の人とも重なり、実話がどんどんフィクションに近づき、フィクションがどんどん現実味を帯び・・・あれぇ・・・(やっと、終了)

追記:この本の著者のアレクザンダー・ウォーも、祖父に英国の作家イーヴリン・ウォーを持つと言う有名な家系で、イ―ヴリン・ウォーの作品「大転落」(岩波文庫)は・・・ありゃりゃ、まだ続くのか?

☆写真上は、パウルやルートウィッヒの父親が支援し建築費用を提供したウィーン分離派会館(セセッション館)上部の黄金の月桂樹(別名;黄金のキャベツ)。下は正面玄関。建物の中には、クリムトの「ベートーヴェン・フリーズ」があります。

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