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みんなみすべくきたすべく

かねてより きになりつつも つきひすぎ はたとあわてて たずねゆくねず

90根津のかきつばたj
伊勢物語で、「かきつばたといふ五文字を、句の上に据ゑて、旅の心を読め」
と言われ、傷心の在原業平がカキツバタの咲く三河八橋で読んだのが、
“「か」らころも 「き」つつなれにし 「つ」ましあれば 「は」るばるきぬる 「た」びをしぞおもふ”です。(着慣れた衣のように、慣れ親しんだ妻を、遠く都に置いてきたことが、旅に出てしみじみと思い出されることよ)

 この句を思い出さずとも、カキツバタといえば、尾形光琳の「燕子花図屏風」というカキツバタが美しく描かれた国宝の屏風(根津美術館蔵)を思い浮かべる人は多いと思います。六曲一双(六折りが2つで一セットのこと)の金地に群青と緑青で描かれた絢爛豪華、雅びで優雅、そして、リズミカルな構成でカキツバタが描かれている琳派代表とも言えるものです。八橋は描かれていませんが、カキツバタの咲く間を、水が流れているかのように見え、左隻と右隻のカキツバタを鑑賞できる構図は圧巻です。
 この度、この「燕子花図屏風」の10数年後、描かれたとされる「八橋図屏風」という、メトロポリタン所蔵の屏風が100年ぶりに「燕子花図屏風」と並ぶということで、恐らく次の100年後には、見に行くことができないので、万難を排して、東京まで弾丸充実美術館二つ日帰りの旅を挙行しました。
 この「八橋図屏風」も、先の「燕子花図屏風」と同じく、6曲一双です。つまり、この二つの屏風が並ぶと、その平面は、広がりのあるカキツバタの庭園と化すわけです。
よく似ているように見えたカキツバタも、近くで見ると、少々違います。国宝のカキツバタは、ぽってり、どこか色っぽい。メトロポリタン蔵の方は、すっきりと洗練されて美しい。描き方の技法が違うようです。が、離れて見ると、林立する 美しい カキツバタたち。
それで、「燕子花図屏風」と「八橋図屏風」の大きな違いは、国宝には橋がなく、メトロポリタン蔵には、かの「八橋」が描かれていることです。「八橋図屏風」の右隻の三扇目辺り上部から左隻四扇目辺りの下部まで、八橋が斜めに横切っています。が、素人目には、八橋がカキツバタの伸びやかさを阻害しているように見え、「橋」なんか描かなくても、「八橋」思い浮かぶねんけどなぁ・・・などと、ド素人のぶつぶつ。とはいえ、離れて見ると、そのダイナミックな斜めの橋が、さながら、川の流れや、伊勢物語の物語自体を表現しているようにも見え、橋を描いたらカキツバタが可哀想などといっているのは、いわゆる素人の近視眼的視点なのでしょう。
それにしても、こんな見逃せない展示が、たった1か月・・・。メトロポリタンも、もっと寛大になってほしいなどと思っていたら、美術鑑賞のあと、根津美術館の素晴らしいお庭を巡って、納得。お庭の中央の池に咲いているカキツバタの開花に合わせた、「粋」な展示だったのです。やっぱり、お江戸です。それで、さぞ、5月の連休の頃は、美しかったであろうカキツバタも、5月20日の会期終了とともに終わりそうでした。

☆写真は、5月17日に根津美術館庭園で撮りました。終了間近のカキツバタとともに、灯篭や、あふれる新緑、赤いもみじが写っています。きっと秋も、きれいなお庭でしょうね。

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