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Caldecott  & Co.

82メッゲンドルファーj
センダックの絵本のいくつかは、いろんな分析をされたり、物議を醸したりしてきました。そういう分析や論議を読むたびに、へぇ、そうなんや・・・難しいもんやねぇ・・・いつも「いいよね、この絵本」と、単純でした。
が、こんなに魅了される作品の多いセンダックが何に惹かれ、何が彼の絵本の基にあるのかは、知りたいことでした。それは、「センダックの絵本論」(脇明子・島多代訳 岩波)に書いてありました。
「センダックの絵本論」は一本の論文ではなく、彼が書いたり、語ったりした評論や談話が32集められたものです。
1990年にこの本が翻訳されたとき、その目次を見て、愕然としました。えっ?私の知らない人ばっかりやん!作品を読んだことや見たことのある人が、ちょうど半分。だから、正直にいうと、一読目は、気持ちが入らない章が多かったのです。でも、いつか、センダックがこんなに熱く語る作品たちに出会いたいと思っていました。
で、願えば叶うものです。まだ、全員とは言えませんが、ほとんどの作品やその作家を知ることができ、おお!わかる、わかる!と、どれもこれも共感しきりなのです。例えば、アーダベルト・シュティフターの「水晶」*は、大好きで大切な作品ですが、センダックも、同じ気持ちみたいで、うれしい!

そんな中の一人、「楽しい仲間―愉快な仕掛けおもちゃ絵本」の作者のロタール・メッゲンドルファーは、かなりのページを割いて紹介されています。それもそのはず、「センダックの世界」(セレマ・G・レインズ 渡辺茂男訳 岩波)という大掛かりな本の中に、センダックが作った仕掛け絵本が入っていて、センダックが子どもの頃から、仕掛け絵本に興味関心が大きかったことがわかるのです。
ところが、そんな1885年頃の作品、しかも、仕掛け絵本!こりゃ無理かも・・・と思っていたら、ドイツに引っ越された方が、私が熱く語っていたのを覚えてくださっていて、復刻版を送ってくださったのです。それが写真に写っているものです。ページの下や横に、引っ張るところがあって、そこを動かすことによって、手足が動き、表情が変わるのです。
その後、確か、海ねこさんで買ったと思う、同じメッゲンドルファーの英語版“The Genius of Lothar Meggendorfer”には、センダックの前書き。好きだったのですね。

写真左の、カードは限定500の213というナンバーが入っているカードで、センダックの直筆コピー(?)のサインがついていました。(写真右の小さい紙)このカードは、お台場に「かいじゅうたちのいるところ」を再現したアトラクションがあったとき、そこに売られていたものをいただきました。細い糸の織物でできた絵です。額装にぴったりなので、いつもは壁に飾っています。で、家に来てくださった人が、「ああ、これ、センダックですね」とおっしゃるか、「これ、かわいい絵ですね」と、おっしゃるかで、話題の方向が見えます。

「センダックの絵本論」は原題を“Caldecott & Co.”≪コールデコットとその一座≫といい、センダックがコールデコットと共にあったことがわかります。それを読んだだけの一座の末席の椅子整理係りの私でも、ドイツから本を送ってもらったり、貴重なカードをいただいたり、楽しいことがいっぱいあるものです。センダックさん、ありがとうございました。

*「水晶」を含む「石さまざま」は、岩波文庫の「水晶―他三篇」もありますが、全訳(6篇)は、松籟社からシュティフター・コレクション1・2として出版されています。

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