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みんなみすべくきたすべく

子どもの本でちょっとお散歩(川 その8)

67ロンドンアイからj
「テムズ川は見ていた」
(レオン・ガーフィールド作 斉藤健一訳 徳間書店)

 ときは、ロンドンビクトリア時代、煙突掃除の男の子が、偶然、事件に巻き込まれ、銀のスプーンと金のロケットをつかんで逃げたところから、話が進んでいきます。テムズ川を生活の拠点にする人たちと男の子、国家に関係するもっと大きな組織、秘密警察。子どもの本として書かれていますが、現代の とある国の話題先行のサスペンスや映像化を意識した小品より、よっぽど面白い。

 ところで、図書館で何カ月か待って、大人のベストセラーものを読むことがあります。その中の、もう題名も忘れた一冊に「こりゃ、いい加減なこと書いている」と思った話題作があります。事件のキーマンの声を、何年か後、電話で聞いているのに、その人とつなげようとしていない。声変わりとか、声色を使うなどという小細工もなく、ただ、時が経っていたので、結びつけず、あっさり流していました。その声の主がわかっていたら、そんな事件も起こっていなかったかもしれないと気になって、その本が一層つまらないものに。
 声の印象というのは、結構、記憶に残るものです。電話することさえ少なくなった最近でも、何かのコールセンターに電話したら、「あ、この人、前も出た」などと思うこともあり、会ったことがなくても、声や喋り方の特徴を覚えている気がします。また、何年か前、指名手配の女の声をメディアで流し、情報を集めたとき、顔は整形していたようですが、声や口調は変わっていなかったので、時効寸前で御用となったことがありました。

 閑話休題、「テムズ川は見ていた」です。
 煙突掃除の男の子、バーナクルは、煙突の中で、下の部屋の密談を盗み聞きします。なんの話かわからないものの、その人たちの声の違いを聞きわけるようになります。
「まるでつるつるした骨のようで、か細い声」「脂ぎったはらわたみたいにぶるぶる震える声」「ひとこと言うたびに笑うくせのある、女の人の声」「・・・そして、4番目の声には、何と言ったらいいか、独特の特徴があった。その声には、あたりの空気を切り裂くナイフのような刃のような鋭さがあった。しんとした中でも血も流さずに切り裂くような鋭さが。」
 この聞きわけた声の主たちが結局、キーマンとして、特に4番目の声の主が、大きな役割を演じていくわけです。
 面白い小説は、細かいことの積み重ねが、読者のわくわく感を高めます。結末がわかっていても、再読して面白いのは、この小さな描写の新しい発見を楽しんでいるのかもしれません。それに、「テムズ川は見ていた」は子どもの本だけに、最後はハッピーエンドです。よかったね、バーナクル。

☆写真は、2012年ロンドンオリンピック一年前に、ロンドンアイからテムズとビッグベンを見下ろし撮影。“厳しいセキュリティチェックの末、民族も年齢も入り混じった数十分の空の散歩はおもしろかったですよ。”(撮影とコメント&Co.I)

** 海ねこエッセイ「T」テムズの項(8月20日)

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