みんなみすべくきたすべく

Lowry展

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 L.S.ロウリー(1887~1976)というイギリスの画家の知名度は、日本で低く、「ロウリー、WHO?」というところでしょうか?私自身も、英国文化論という英国人教授の授業を受講するまでは、まったく知りませんでした。そんな画家の没後、初めてとも言える(らしい)大きな回顧展が、ロンドン テートギャラリーで催されました。そのほとんどの作品が、英国マンチェスターにありますから、マンチェスターに行けない人間にとっては、ロンドンで作品を見るチャンスでした。(2013年6月26日~10月20日)

 イギリス、マンチェスターが工業地として発展していく様を中心に作品があります。会社員のロウリーは、「日曜画家」と言われたことに、「だとしたら、私は毎日が日曜だ」と反論しました。マンチェスターの街とサッカーを含めた人間を描いています。建物は、定規で描かれたように、下手な遠近法だし、工場に出入りしようとする人々は、没個性。「日曜のみの画家」と揶揄されても仕方ないようなタッチです。仏蘭西のユトリロに人をうまく描けないところが似てます。
 なので、私自身もこの画家は、デッサンがうまくない、少々偏った画家なのかと考えていました。が、不思議に心を惹きつけるものがあり、ずっと忘れないでいたのです。この人の作品に会いたい・・・
 が、私の認識不足でした。きっちり、美術学校で学んでいる時の自画像などは、別人かとも思えるほど繊細で、トラディショナルです。ユトリロの他にも、ピサロやドガ、シスレーなどの作品ととも並べられていました。

 ところが、端正に描かれた絵よりも、後から描かれた、工場に黙々と入っていく人々、淡々と帰っていく人々、サッカー場に足早に歩く人々の絵に目が引き付けられます。黙々と煙を上げるすすけた英国工業化の時代、そして、その街。
 直線的で鋭角な街、丸みを帯びた風景に癒されてきた人々が、目的に向かって、もくもくと進む。適当に描かれているような群衆が、その朝やその午後、その夕方の空気を表現しているのです。いい加減に描かれているような人一人ひとりが、その歩幅や向きの違いから息づいてくるのです。
 わざわざ、予約を取って見に行ってよかった展覧会でした。

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モリス・ルーム

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 短期間のロンドン滞在ですから、効率よく動かないと、予約を入れた2つの美術展を回れないし、紅茶買いに行けない!で、ビクトリア&アルバート、モリスルームでお昼を食べよう!ということになって、行きました。トレイもモリス柄(写真下)。

 嬉しそうに、モリスルームの写真を撮っているのは私くらいのもので、他のみなさんは歓談お食事中。
 いつもは、このV&Aの近くに泊まり、夜にここに来ることが多いものの、今回は、早朝スイスに飛んでいく都合上、真昼間に来たのです。食べに来たのが目的なので、鑑賞は娘ご推薦のジュエリールームだけ。新旧、歴史を感じさせる豪華絢爛なものから、アヴァンギャルドなものまで。今まで来たことのない部屋だったので、ずいぶん堪能させてもらいました。綺麗!うっとり!
モリストレイj

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Vermeer & Music

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  ロンドンにもたった2日ですが、行っていました。
 ナショナルギャラリーでやっていた「フェルメールと音楽展 Vermeer and Music: The Art of Love and Leisure」(2013年6月26日~9月8日)に行きました。これは、昨年11月のブログで案内したものですが、思いのほか、フェルメールの作品が少なくて、拍子抜け。2001年「フェルメールとデルフト派展」が13点も並んでいたので、ずいぶん期待していたのです。

 もともとロンドン・ナショナルギャラリーにある「ヴァージナルの前に立つ女」「ヴァージナルの前に座る女」二点と、ロンドン・ハムステッドのケンウッドハウス「ギターを弾く女」(写真に写る幕の絵)の一点が出展されるのは、当然のことですが、珍しかったのは、真贋かまびすしい個人のコレクション「ヴァージナルの前に座る若い女」の一点と、ロンドンバッキンガム宮殿クィーンズギャラリーの、計5作品。ま、このクィーンギャラリーのフェルメールは、クィーンズギャラリーに行ったからといって必ずしも展示されているとは限らず、以前に行った時は、見れませんでしたから、よかったのですが、5点中の4点がロンドン在住のものって、どうよ?

 ニューヨークメトロポリタン美術館の「リュートを調弦する女」ウィーン美術史美術館の「絵画芸術」アムステルダムの「恋文」にも、楽器がでてくるやん。図録の解説によると、音楽的テーマや楽器が描かれているものは12枚あるとのこと。うーん、じゃあ、「デルフト派と音楽、そして、楽器展」というタイトルの方が合っていると思いますけど?それじゃ、わざわざ、こんな酔狂な日本人が見に行かないか・・・

 とはいうものの、展示がこじんまりとまとまっているのは、いつものナショナルギャラリー企画展と同じで、良かったです。当時の美しい楽器を絵と一緒に展示して、つぶさにながめることができたのは、楽しいひとときでしたし、フェルメールの絵画の特徴や技巧を細かく解説した部屋があって、本物と解説を行ったり来たりして、楽しめたのも、予約で入場する混雑していない空間ゆえに成せる技で、結果、満足して、会場を後にしたのです。

 で、次にも向かう予定があるので、広大なナショナルギャラリーのたった一枚の小さな絵をお心静かに観て、ナショナルギャラリーを後にしました。
 同行の娘に感心されましたが、あの絵の場所だけは、迷わず行けます。はい、すみっこにある例の小さな絵です。スルバランの「A Cup of Water and a Rose on a Silver Plate」 

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ポール・クレー センター

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 ベルンに泊った理由には、ロンドンから一緒にスイス入りした娘が、ポール・クレー美術館に行きたいと言ったこともありました。もちろん、私自身も、もう一度行きたいという希望がありました。ただ、問題は、前回の訪問の時、余りに多すぎたクレーの作品に、夫は、途中で飽きてしまっていたこと。

 が、なんということか!行ってみると、
 前回の二会場に分けて、所狭しとあったクレーの作品が、たった一会場。え?
 しかも、「クレーと風刺画展」。え?つまり、夫が、満腹になるほど、クレーの作品がなかったのです。うぇーん!!!クレーファンとしては、納得行きません。あんなにたくさんあったのに!!!!

 初めて見る娘は満足の様子でしたが、納得のいかない私は、その場に居た学芸員に必死で聞きました。すると、私が前回訪れたのは、美術館開館の年(2005年6月にオープン、私が行ったのは、同じ年の8月)だったようで、花々しく、展示してあったようなのです。そうだったのか・・・

 一連の天使ものはどこ?ああ、ない!(当時、この一連の天使ものや素描の多さに、夫は圧倒されていました。)
 大きな展示室の一つを閉めてるって、財政難なだろうか・・・2005年だから、まだ改装中貸し出しというわけでもないし・・・あの天使たちに会えると思っていただけにほんとに残念。

 とはいえ、開催されていた「クレーと風刺画展」は、フランスのオノレ・ドーミエHonoré Daumier(1808-1879)やベルギーのジェイムズ・アンソールJames Ensor(1860-1949) 等の風刺画や戯画の影響をポール・クレーPaul Klee(1879-1940)が受けているという企画展でした。ドーミエの絵や風刺画の世界は、今までも楽しんできたので、思わぬ出会いでした。クレーと風刺画なんて知りませんでしたから。

 なかでも、一番楽しかったのは、彼の数学のノートが、所狭しと描かれた落書きで展示されていたことでした。「授業、聴いてないやん!」というくらい毎回の落書き。多くは人物の顔ですが、達者なデッサン集のようでした。当然、どのページにもあるのですし、貴重な資料ですけれど、アイパッドiPadに写真化(データ化)されることによって、鑑賞者の指で繰って、どのページも眺めることができました。ガラガラに空いている会場なので、ゆっくりiPadで楽しみました。

 この美術館は、明るくて伸び伸びした感じがあって、ポール・クレーの明るい部分に近いような気がして大好きです。大変な生涯をすごしたポール・クレーですが、やっぱりこの人は、芯が明るいのではないか。その明るさが伝わる数々の作品に、いつも、励まされるのです。とはいえ、やっぱり、クレーの展示作品が少なすぎる!4000点も持っているんだから、常設展があってもよさそうなのに・・・・

 先日書いたクライドルフ展のベルン美術館もこのポール・クレー美術館も、いったいぜんたい、どうしたん?ベルンの街の至る所で工事があったこととも、遠くで関係しているの???ふーむ。

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ベルンとクレー

クレー写真j
 家人それぞれの移動の都合上、ベルンに泊まったので、他の場所に比べ、こだわりなく、駅に近い、しかも3人で寝れるという条件でホテルを押さえました。
 他のホテルは規模の小さい納得のいくホテルだったのに比べ、ベルンで泊まったホテルは、小さなエキストラベッドをやっと入れたような、ビジネスホテルのよう、しかも、割高。スイスは物価が高いし、ベルンは首都だし、駅に近いし・・・とあきらめたのですが、一つだけいいことが。

 部屋にも廊下にもポール・クレーの複製画、そして写真が!カーテンもクレーのいずれかの画から取ったデザインで、とてもオシャレ!

 そしたら、ホテル入口に案内が・・・「このホテルの地で、クレーは子どもの頃、泊まり(滞在?)こんな絵を描いた」と、子どもの頃の絵と、当時の写真が掲げてありました。で、その案内には番号が打ってありましたので、おそらく、市内には、他にもクレーゆかりの場所があるんだろうと。

 また、市内には、クレーギャラリーの波打つ建物をデザインしたマークが各所に使われていて、ベルン自体が、クレーを郷土の誇りと思っているように見えました。で、もうひとつの誇り?が熊でした。(つづく)
☆写真上は、ホテルの廊下。下はベルン市内。

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ベルンのクライドルフ展

ベルン歴史博物館j

 行ってよかった「クライドルフ展」のことは、以前に書きました。(2012/6/19~7/29東京渋谷BUNKAMURA ミュージアム)
 この夏、ベルン美術館でクライドルフ生誕150年「クライドルフ 蝶の舞踏会、犬のパーティ展」が開催されているのがわかりました。せっかくだから、行かなくちゃ、ということで行きましたが、結論から言えば、BUNKAMURAの方がずっと良かった。ずっと楽しかった。展示されているものの一部は重なっていたのだと思いますが、日本の方が、展示の方法に創意工夫が感じられました。

 作品自体を見るのですから、展示方法に創意工夫など不要と言う考えもあるでしょう。そうであるならば、展示の壁色、配置など、必要ないという考えも生まれます。が、現実には、作品展である以上、その作品たちを存分に楽しめる(鑑賞できる)設定は必要だと思います。

 確かにBUNKAMURAのそれは、工夫しすぎだったかもしれません。またWEBでの案内も、動かなくてもよかったクライドルフの絵がアニメーションのように動いたなどと、過剰な感じもありました。が、クライドルフが、絵本と言う子どもが楽しむ作品を作ったことを考えると、子どもが鑑賞者として会場に足を運ぶことは十分に考えられます。そこで、会場がなごやかな雰囲気に包まれ、敷居の高くない作品の楽しみ方ができるのは、現代の作品の楽しみ方の一つとして大事なことだと考えるのです。
 例えば、昨日書いた「貴婦人と一角獣」が、かつては、お城に飾られ、一部の人だけのものだったのが、今や海を渡り、大阪のおばちゃんたちの目にも触れる・・・中世でも大戦前でもないのですから、たくさんの人が美しいものを楽しめる時代の美術展の在り方を工夫するのは当然のことだと思います。

 が、ベルン美術館の方は、淡々と並べてあるだけで、部屋も狭い。天井も低い。何より、不親切で愛が感じられない。さほど大きな美術館ではないのに、「クライドルフ展」の会場が、どこかわからなくて、二度も聞きました。(言葉もわかってないけど、ふつうは、矢印等で、わかりやすくしてあると思うじゃないですか)
 また、同じ日、このベルン美術館で「Myths and Mysteries展」をやっていましたが、こちらも、なんだか、めりはりのない展示でした。一目でわかるムンクやクノップフまでもが、なんかいろんなものにまみれて、より寂しそうに見えました。

☆ベルン美術館は、写真に撮っていません。写真上はベルン歴史博物館。下は、スイス連邦議事堂(ベルンは、スイスの首都です)。

                連邦議事堂j

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